ルクスさんの兵器解説 第二回
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![]() photo by KMW |
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今回、紹介するのはレオパルト2PSOです。 本車は、PKO活動での使用を主眼に KMWがプライベート・ベンチャーで開発したレオパルト2の改良型です。 因みにPSOとは、Peace Support Operationsの略称です。 |
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この改修は、非対称戦での生存性の向上が主眼となっています。 狙撃を避けるために対空機銃はリモコン式にし RPG対策の増加装甲が装着するといった改修が施されている。 |
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PSOは、ドイツ連邦軍も興味を持って テストの結果、採用が決まったよ。 |
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現在、ドイツ連邦軍のPKO活動は軽装甲車両が主力となっていますが、 近年は危険な地区での活動が多くなっており 将来的に戦車が必要な場面がでてくると思われます。 |
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コンセプト | ||
![]() 2005年にKMWが発表したCG phot by KMW |
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20世紀末に冷戦構造が崩壊したことにより、少なくともレオパルトを装備するような西側諸国では、戦車を使用する大規模な機甲戦が行なわれる可能性は低くなった。 現在、LEOBEN(レオパルト使用国)で想定される、主な戦闘環境は平和維持活動等による非対称戦が中心となっている。 非対称戦環境下の敵は装甲車両をもたない歩兵である場合が多い。これに対し、戦車の主砲は弾薬が高価で搭載数が少ない。またコラテラル・ダメージをもたらす可能性も高い。 一方で、副武装は7.62mmで遮蔽物に隠れた敵に対し威力不足の感がある。これら戦車の主砲と同軸機銃は、高い仰角がとれず高い建物への射撃が難しいといった短所がある。 また戦車は近距離で死角が多く存在し、市街地のような入り組んだ地形では、RPGや自爆攻撃等の不意の攻撃に弱いという一面もある。これは、従来の戦車が装甲を正面に集中させてきた事実とあいまって、大きな弱点となっている。 しかし、主力戦車がもつ高い防御力はIEDや自動車爆弾に対抗できる可能性が高く、大口径の主砲によるピンポイントの精度は、歩兵にとって心強い支援となる。 このため、上記の欠点を改善して非対称戦特有の脅威に対抗する追加装備を施し、レオパルト2が長所を発揮できるようにしたものがレオパルト2PSOである。 PSOは、新規製造による販売というよりは既存車両の改修を狙ったビジネスと思われる。現在は中古のレオパルト2が安価に入手可能な状態であり、設計寿命が迫りつつあるレオパルト2の新規製造は現実的でない。 レオパルト2PSOには、以下の改修が行なわれている。
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試作 | ||
![]() レオパルト2 PSO 2005年のデモンストレーター(在来型の車体) Photo by KMW ![]() レオパルト2 PSO 2006年のデモンストレーター(DEMO2車体) phot by HEER/Katharina Winkler DEMO2の車体に、A5をベースにした砲塔を搭載している。 |
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デモンストレーターの車体 レオパルト2は2005年と2006年に異なるデモンストレーターが発表されている。2005年のデモンストレーターはA6までと同じ車体を使用して製造された。そして、2006年にユーロパワーパックを装備したレオパルト2A6EX DEMOUの車体を使用したデモンストレーターが公開された。 両車の違いは防御力とエンジンにある。2005年のデモンストレーターは、ドイツ連邦軍がこれまで装備してきた車体と基本的に同一である。ただし、PSO化するにあたって側面に増加装甲が装着されている。これは側面全面に施されているわけではなく、戦闘室側面のみをカバーしておりエンジンデッキ側面には装着されていない 一方2006年のデモンストレーターは、レオパルト2A6EX DEMOUと基本的に同一である。2005年のデモンストレーターとの違いは、車体前面に追加装甲を施し、エンジンをユーロパワーパックに換装している点である。こちらも追加の側面装甲が施されている。 |
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↓参考までにレオパルト2A6EX DEMOT![]() 砲塔上面と車体正面にも増加装甲が装着されているのがレオパルト2A6EX DEMO1。 これにユーロパワーパックを装備したものがDEMOUと呼ばれる。 |
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レオパルト2A6EX DEMOTとDEMOUの識別に付いては FRANK LOBITZ著 Tankograd刊 『Kampfpanzer LEOPARD2』を参考にしました。 |
武装 | ||
![]() FLW200 Photo by KMW |
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主砲 主砲は、レオパルト2A6から装備された55口径120o砲でなく、A5まで装備していた44口径120o砲を装備している。これは市街地での取り回しを考慮してと言われている。非対称戦において、火力と装甲で圧倒されるような状況はまずありえないので現実的な選択だろう。また、追加装備により重量67.5tに増加している点も見逃せない。 リモコンガンマウント これまでレオパルト2は、歩兵との接近戦に砲塔のハッチにあるMG3を使用するとされていたが、これは乗員が身を乗り出して使用しなければならず狙撃の危険に晒されていた。 これを解決する為に、KMW製のFLW200リモコンマウントが砲塔上面に装備さた。これは、昼夜間用カメラ付の電動ガンマウントで、車内から安全に射撃出来る。 このマウントには、7.62mm汎用機関銃MG3、12.7o重機関銃、そしてH&K製の40o自動擲弾発射器GMGを装着することができる。 武装を変更することも簡単で、1分以内に交換できる。武装が交換されると、武装と弾薬の種類を自動的にオペレーティング・ソフトウェアが認識する。重量は武装無しで170s。オプションで、レーザーレンジファインダーやIFF、スモークディスチャージャーを装備する事もできる。 FLW200以外にも、スイスが使用しているレオパルト2(Pz 87 Leo WE)が装備したリモコンガンマウントAWBSを選択することもできる。2006年6月のユーロサトリで展示されたときはAWBSを装備していた。WEの画像 サーチライト また主砲上部にはサーチライトを装備している。これは、視察用ではなく自身の存在を示すで威圧し、暴徒を解散させることを目的としている。 |
機動性 | ||
逆光で見にくいがPSO DEMO2 エンジンデッキが延長されている。 ![]() phot by Vepper |
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車体は、新型のユーロ・パワーパックを装備したレオパルト2EX DEMOUの物が使用されている。ユーロ・パワーパックは、エンジンをMTU製MB873からMT883に変更し、トランスミッションはレンク製のHSWL295TMを使用している。これにより出力は出力1103kWから1210kWに向上し、燃費も改善している。 パワーパック自体は小型化されたが、マフラーは赤外線放射を低減させるものに変更されたのに伴ない車体後部が延長されている。この延長部にはAPUも搭載されている。 欠点は、これらの変更によりエンジンが容易に取り出すことが出来なくなったことである。また、このパワーパックは従来のものより1m短縮されているが、車匡も含めた包括的な改修が必要であり、既存車両への組み込みは簡単ではない。 |
防御 | ||
![]() レオパルト2PSO DEMOU 2008年撮影。 phot by Vepper |
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車体は、レオパルト2EX DEMOUを使用しているので車体前面装甲が強化されている。PSOでは、さらに車体側面にモジュラー装甲が取り付けられている。砲塔はレオパルト2A5のものを使用しており天井に増加装甲は取り付けられていない。しかし砲塔側面に追加のモジュラー装甲が取り付けられている。 モジュラー装甲は、RPG-7等の歩兵携行式対戦車火器を考慮したものである。このうち砲塔側面のモジュラー装甲は、砲塔から僅かに距離を置いて設置されている。スモーク・ディスチャージャーは、この隙間に設置されており、小口径弾の被弾による破損や誤作動から守られている。 また砲塔後部に増設されたエアコンも、空間装甲の代わりになり成形炸薬弾にある程度効果があると思われる。車体後部も延長部に増設された補助発電機も同様だろう。 更に後部車体上面のエンジン用ベンチレーターは、火炎瓶に脆弱であるので塞がれており、側面と後部に移動している。 この他、MOUT(Military-Operations-in-Urban-Terrain)と呼ばれる、特徴的な迷彩が施されている。これは、KMWのF2装甲車のデモンストレーターにも施されている。 |
視察装置 | ||
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戦車は、近距離では死角が多く市街地等の入り組んだ地形での襲撃に弱い。これを解決し監視を容易にするために、車体両側面中ほどに小型カメラが配置された。 車体後部にもバックモニターを装備できる。これにより360度監視出来るようになった。 |
その他の装備 | ||
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砲塔後部右よりには、乗員の負担を軽減するエアコンが装備されるようになりました。北国で育ったドイツ人には、アフリカやボスニア等の紛争地域は暑すぎるのです。 贅沢だなんて言わないでね! |
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リモコン・ガンマウントやエアコンの装備により増加した電力消費量を補う為に、車体後部の延長部分右側にAPU(発電機)が装備されている。これは、長時間の監視任務等でエンジンを回しっぱなしにすると、活動時間が短くなってしまう為である。 車体左側面後方には、歩兵と連携する為のインターフォンが装備されている。これはエンジンと近い位置にあるため、雑音を除去する装置が装備されている。 車体前端にはドーザーブレードが装備されている。これは、路上のバリケードやコンクリートブロックを除去する為のものである。戦車の体当たりは強烈なように思えるが、キャタピラに異物を巻き込みやすく、車体下部が異物に乗り上げてしまうと行動不能になる可能性もある。このドーザーブレードは5tの障害物を除去でき、上下左右に動かすことができる。 上記の追加装備により増加した重量を少しでも軽減する為に、通常の履帯より約500s軽いP0履帯を装備している。 |
調達 | ||
2009年5月に、クラウス・マッファイ・ベクマンはドイツ連邦軍がレオパルト2PSOの調達を計画していると発表した。これは既存のレオパルト2にPSOコンポーネントを組み込むもので、2011年から2018年にかけて150両を調達するとしている。 まず50セットがUrbOp (Urban Operations)の名称で調達される。正確には、PSOコンポーネントを元にしたキットとしているので、ドイツ連邦軍の要求に合わせて、変更が加えられるものと思われる。 |
諸元 | |
重量 | 67.5t |
全長(砲塔12時で) | 10.97m |
幅 | 4.00m |
高さ(砲塔天井まで) | 2.64m |
エンジン出力 | 1100Kw(1500hp) |
最大速度 | 72q/h |
航続距離 | 450q |
武装 | 55口径120o砲※、7.62o同軸機銃 リモコンマウントは12.7o機銃、7.62o機銃、40o自動擲弾銃から選択可能。 |
※主砲は55口径となっているがKMW公式サイトママ。 |
まとめ | ||
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レオパルト2EXについてる、砲塔上面の増加装甲が採用されてないのはなんでだろ? 市街地で建物の上からRPGとか撃たれたときに有効だと思うんだけど・・・ |
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それについては分からないんだけど、重量の増加というのが一つの理由かも? それに、追加の上面装甲の厚さではRPGに対抗できないかもしれないし。 |
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同様の改修としては、アメリカのM1TUSKやルクレールAZURがあります。どちらも増加装甲とリモコン式ガンマウントの装備が予定されており、レオパルト2PSOの性質に近いものです。 | |
参考資料 KMW公式サイト 『LEOPARD2PSO』Frank Lobitz「Tankograd−MILITARFAHRZEUG1/2007」 『Das Heer der Bundeswehr im Einsatz2007 Leopard2PSO』Andreas Krichhoff「Tankograd−MILITARFAHRZEUG4/2007」 『Kampfpanzer LEOPARD2』FRANK LOBITZ著 Tankograd刊 |
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追記 レオパルト2A7+ | ||
![]() 2010年6月のユーロサトリで、レオパルト2PSOを基にしたレオパルト2A7+が発表された。 詳細はこちらで |
おまけ 動画 | ||
↓レオパルト2PSO 予備 |
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参考までにレオパルト2各種 | ||
レオパルト2A4 A1〜A4は、生産バッチの違い。 細かい違いも有るが、後にすべてA4仕様に改修された。 ![]() phot by KMW レオパルト2A5 TVMミニマム(TVM2)と呼ばれる改修により、砲塔前面にショト装甲が装着される。 主砲は44口径のまま。 ![]() phot by KMW レオパルト2A6 主砲が44口径120mm滑腔砲から55口径120mm滑腔砲に換装された。 これに地雷防御を施したA6Mもある。 ![]() phot by KMW レオパルト2A6EX DEMO1 A5やA6で使用されている増加装甲に加えて 砲塔上面と車体前面にも増加装甲が装備されている。 ![]() phot by KMW レオパルト2PSO 2005年に発表されたデモンストレーター 車体はA6までと同じ ![]() Photo by KMW レオパルト2PSO DEMO2 2008年撮影 ユーロパワーパックを搭載しエンジンデッキが延長されている ![]() phot by Vepper |
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