SysFla 対空システム
2010/05/15;作成
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概要
SysFlaは、ドイツ連邦軍が平和維持活動での使用を主眼に調達中の対空システムで、海外の駐屯地の防衛を目的にしている。SysFlaは、対空ミサイルとC-RAMを組み合わせた複合的な対空システムで、固定翼機や回転翼機といった従来の航空目標に加えて、ロケット、榴弾及び迫撃砲弾を撃墜することが要求された。因みにSysFlaとは、System Flugabwehrの略でFlugabwehrは対空や防空を意味する。


C-RAMの要求
現在、平和維持活動に参加する各国の軍隊は、駐屯地に対するロケット弾や迫撃砲弾による攻撃に悩まされている。これらは武装勢力によりゲリラ敵に発射される上、従来の兵器では防御することが出来なかった。ドイツ連邦軍もアフガニスタンで平和維持活動を行っているが、実際にマザリシャリフとクンドゥズの駐屯地でロケット弾や迫撃砲による攻撃をたびたび受けている。

そこでアメリカを始め幾つかの国は、こうした非対称攻撃の脅威に対抗しうる新しい防御兵器を、C-RAM(Counter-Rocket, Artillery, and Mortar )の名称で開発を始め、ドイツ連邦軍もこの種の兵器の調達に乗り出した。


調達
ドイツ連邦軍はC-RAMの導入の検討を始めると、迅速な展開能力や、RAMだけでなくヘリコプターや固定翼機といった古典的な目標に対処できることを要求した。最初、BWB(武器技術及び調達連邦局)は、この様な対空システムを市場から調達しようとしたが、要求に見合うものは無かった。このためBWBは、System Flugabwehr(SysFla)の名称で独自に開発することを決め、システム全体の構築を依頼するためにドイツ軍需産業の分析フェーズに入った。この分析フェーズの結果に対し、ラインメタル・ディフェンス社とMBDAドイツ社は共同でSysFla GmbH社を設立し、分析フェーズの結果に適した計画をBWBに提案し認められた。

こうして、2007年3月からドイツ連邦軍とともに、NBSの名称で前進作戦基地の防御システムとして、近距離及び極近距離からの脅威に対処する様々な付属設備と共に開発が進められた。開発は、エリコン・コントラヴェス(2009年1月にラインメタル・エアディフェンスとなる)の35㎜高射砲 スカイシールドをベースに行われた。NBSは、2008年夏にNBSは実戦的な作戦環境での実射テストを成功裏に終えた。

こうした活動の結果、2009年5月にドイツ連邦国防省は最初の2システムを2011年までに調達することを認めた。これにより、2010年の第一四半期に完全な機能を有したユニットを使用可能にするため、現在開発が進められている。

SysFlaの攻撃手段

NBS C-RAM
SysFlaの特徴は、高射砲NBS C-RAMと対空ミサイルLFK NGという二つの攻撃手段を組み合わせたことにある。RAM(rocket, mortar and artillery)に対しては高射砲NBS C-RAMで対処し、遠距離の航空機に対しては対空ミサイルLFK NGで対処する。

NBS C-RAM
高射砲NBS C-RAMは、ラインメタル・ディフェンスのAHEAD弾を使用し“極短距離(Nächstbereich)”(約3㎞まで)をカバーする。NBSとは、Nächstbereichs-Schutzsyste の略語で極近距離防御システムを意味する。これは、以下の目標に対処する。
  • 小口径ロケット弾
  • 迫撃砲弾
  • 榴弾

LFK NG
対空ミサイルLFK NG(MBDAドイツとディールBGTディフェンスの共同開発)は、“近距離(Nahbereich)”(約10㎞まで)をカバーする。LFK NGとは、Lenkflugkörper Neue Generationの略称でLenkflugkörperはミサイルを意味し、Neue Generationを新世代を意味する。これは、以下の目標に対処する。
  • UAV
  • 大口径ロケット
  • 固定翼機/回転翼機

SysFlaのコンポーネント
 
SysFlaは、高射砲、対空ミサイル、レーダー、赤外線偵察追跡センサー、そしてそれらを統制するコマンドポストから構成されている。
NBS C-RAM
ラインメタル・ディフェンスが開発した最大射程約3㎞の近距離防御用の高射砲。
これは、35㎜×228AHEAD弾を発射する。AHEAD弾は砲口を通過するときに時限信管の調定を行い、目標に対して最適位置で起爆し152個のタングステン製の
子弾(subprojectiles)をばらまくものである。
LFK NG
現在開発中の対空ミサイル。MBDAドイツとDBDが共同開発している。距離10km、高度5kmまでの脅威に対処する。SysFlaではNBS C-RAMと共に2つの作動体が配置される。LFK NGは、支援ヘリ ティーガーへの搭載も検討されている。
LFK NG発射機
LFK NG発射機は、迅速な展開能力と即応性による高い機動性をコンセプトにしており、短期間で360度の拠点防御を実施できる。
360度 赤外線捜索・追跡センサー FIRST
FIRSTは赤外線捜索・追跡装置で、自動的に迅速な空中目標の3D探知及び追跡を行う。これは、ネットワーク及び連携能力がある。FIRSTは、軽量でコンパクトな構造により簡単に輸送することができる。

ラインメタル 製品紹介
センサー・ユニット NBS
このセンサー・ユニットは、脅威を発見・追跡し、短時間で警告を発することができる。センサーデータにより、攻撃者の位置を算出することができ、戦場の敵兵士を補足するのに適した対抗措置である。このシステムは、回転して全周を警戒する。

ラインメタル 製品紹介
SysFla コマンドポスト AOV
NBS C-RAMのコマンドポストは、対空ミサイルLFK NGや赤外線センサー FIRSTとも接続できる。このコマンドポストは、防空システム全体の脅威分析を自動的に行い、適した攻撃手段を使用する。これは、さらにセンサーを追加することや、戦術データリンクに接続することも可能である。
動画


ドイツ連邦軍公式サイトより高射砲兵の紹介 
2:57辺りにNBS C-RAMが迫撃砲弾を破壊するところが映っている。

途中にヴィーゼル2をプラットフォームにした対空システムLeFlaSysも写っている。
これも、6月中には解説したい。

 
ラインメタルの更なる計画
 
ラインメタルは、SysFlaの更なる発展を目指している。これは、長距離レーダーの追加や、拠点防衛を主眼に進められているSysFlaを車載化し野戦部隊に追求できるようにするものである。
ラインメタル・ディフェンスは、SysFlaの基本構成は軍営等のインフラ防衛を第一に設計されているが、モジュール化されたシステム・アーキテクチャーにより、機動的な部隊にも同等の防御レベルを付与することができる。


SysFla LEICHT
SysFla LEICHTは、ドイツ連邦軍が現在使用しているLeFlaSys(軽防空システム)の改良案である。LeFlaSysは、空挺部隊での使用を主眼に開発された対空システムで、ヴィーゼル2をプラットフォームにしておりCH-53Gで空輸できる。これは、攻撃手段にスティンガーを使用しているので射程が6kmだが、SysFlaのLFK NGに変更すれば10kmに延伸できる。


SysFla MOBIL
これは、拠点防衛を目的としているSysFlaのコンポーネントを車載式にして野戦部隊の防衛に充てるというものである。

NBS C-RAMとLFK NGのプラットフォームとしては、ラインメタルが自社開発した装輪装甲車GeFaS(防御車両システム)を提案している。GeFaSは、対地雷防御とモジュラー構造による柔軟性をコンセプトに開発された。GeFaSは、全ての車軸に電動モーターとステアリング機構が装備されており、地雷でエンジンが損傷してもバッテリーで走行できる。

コマンドポストも、ドイツ連邦軍のGFF4プログラムに応じて開発中のヴィゼント提案し、自社製品のセールスに余念が無い。
 
GeFaS
(Geschütztes Fahrzeugsystem/防御車両システム)

類似の兵器

アメリカのC-RAM
 C-RAMは各国で開発が勧められており、アメリカのEAPSやイスラエルのIron Dome等がある。詳しい話はウィキペディアでどうぞ。 

参考資料 
このページの画像及び情報は、主にラインメタルの公式サイトからの転載です。

ラインメタル・ディフェンス ニュース Februar 2010
ラインメタル・ディフェンス ニュース 09/08/2009
ラインメタル・ディフェンス プロダクト SysFla
メモ
Wirkmittel→Means of Force 
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あとがき
この情報はラインメタル・ディフェンスの公式サイトを参考にしましたが
この中にはドイツ連邦軍が要求していない独自開発の機材が
こっそり紛れ込んでいる可能性もあります。

ラインメタルの公式サイトは、景気の良さそうな宣伝よくするので・・・
部隊試験が始まったら、詳しいことがわかると思うよ。

続報があれば、このページをアップデートするね。
各コンポーネントの詳細も追加したいな。
それから、このサイトはドイツ連邦軍が正式採用した装備を中心に紹介していく予定ですが
要望があればプライベートベンチャーのGeFaSも紹介します。
リクエストはWeb拍手Twitterにどうぞ。
(メールはpk510@hotmail.co.jp)

ということで今回はこのへんで・・・
また来てね☆
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